シロアリは木材を好んでエサにしています。住宅の木材に対して大きな被害をもたらす場合もありますが、適切な方法で予防に努めることが大切です。
この記事はシロアリが木材をエサにする理由や、好んで食べる木材の特徴のほか、住宅の木材を食害されないようにするための予防方法について解説します。
シロアリが木材をエサにする理由
シロアリは木材の主要成分であるセルロースを栄養源としています。
本来セルロースは分解して栄養源にするのが難しい物質ですが、シロアリは原生生物や細菌などを腸内に共生させ、効率的にセルロースを分解し栄養源にしています。
木材以外にもセルロースを含む紙などもエサにする
シロアリは木材のほかに、以下のようなセルロースを含むものもエサにします。
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新聞紙
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本
- ダンボール
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畳
- 衣類
また、シロアリはセルロースを含まないゴムやプラスチック、コンクリートなどにも穴を開ける場合があります。この際、エサとして食べた跡の穴ではなく、エサ場の途中にある障害物を食い破って進むための穴が開きます。
シロアリのエサ場へ向かうエネルギーは膨大で、エサ以外の硬いものも頑丈な歯で噛みちぎってしまいます。
シロアリが好む木材の特徴
シロアリは、次のような特徴をもつ木材を好んでエサにする傾向があります。
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やわらかい樹木で作られている
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水回りなど湿度が高い場所に使われている
- やわらかい部位の辺材
細胞の密度が低く材質そのものがやわらかい木材や、水分を含んだ木材、細胞が若くやわらかい部位の辺材などを好む習性があります。
やわらかい樹木で作られている
シロアリ被害が特に多いのは、次の樹木で作られた木材です。
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マツ
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モミ
- セン
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ホワイトウッド
- ブナ
これらの一般的に細胞の密度が低いため、やわらかい材質の木材です。基本的にシロアリはどのような木材も食べますが、食べやすくやわらかい木材を特に好む傾向があります。
水回りなど湿度が高い場所に使われている
シロアリが食べやすいのは、水分が染み込み組織がやわらかくなった木材です。
そのため、シロアリは湿度の高い床下の柱や雨漏りのある屋根裏、浴室・トイレ・洗面所などの水回りの木材を好んで食べます。
ただし、これはすべてのシロアリに当てはまる訳ではありません。
例えば、アメリカカンザイシロアリのように、建物の2階部分や家具などの湿気を含まない木材を中心に食べ進め、家中に被害を拡げる種類もいます。
やわらかい部位の辺材
樹木の幹は中心部分の心材と周辺部分の辺材に分かれ、含んでいる水分量や硬さなどが異なります。
辺材:形成層に近い部位で、細胞が若く水を通していてやわらかい
心材:形成層から遠い部位で、細胞が古く水を通さなくなり硬い
樹木は幹を太くする際、樹皮の近くの形成層が細胞分裂をして内側へ環状に細胞を増やしていきます。形成層に近い辺材は心材よりもやわらかく、シロアリが食べやすいです。
一方、心材は古くなっていく過程で硬くなるだけでなく、細胞内の物質を防虫効果のある樹脂成分に変えていくため、シロアリが避ける傾向があります。
木材へのシロアリ被害の予防方法
木材へのシロアリ被害を抑えるためには、床下の通気性を高めるほか、住宅周辺にシロアリのエサとなりやすい木材やダンボールを放置しないようにする必要があります。
さらに新築や増築の際には、シロアリが好まない種類の樹木や硬い心材を使うと被害を最小限に抑えられる可能性があります。それぞれについて詳しく解説します。
床下の通気性を高め除湿を促す
シロアリ被害を予防するために、床下に設置して通気性を高められるものとして以下が挙げられます。
専用の換気ファンを設置して稼働すると、乾いた空気が床下全体に行きわたり湿度が下がります。また、セラミックや備長竹炭などで作られた専用の調湿剤を設置することで、木材の吸湿を抑制できます。
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換気ファン
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調質剤
床下の状況にあわせた除湿策は、専門業者から最適な方法を提案・施工してもらうこともできるため、必要に応じて相談すると良いでしょう。
住居周辺に不要な木材やダンボールを放置しない
不要な角材やダンボールなどを住居周辺に置いたままにしておくと、エサ場としてシロアリを呼び寄せてしまい、そこを足掛かりにして住宅に侵入してしまう可能性が高まります。
シロアリを寄せ付けないためにも、庭や玄関先に木材やダンボールなどを長く放置しないよう注意しましょう。
新築や増築をする際にシロアリ対策をする
家を建てる際や増築をする際、シロアリが好まない種類の樹木や硬い心材部を使うとシロアリ被害を抑えられる可能性があります。以下で詳しく解説します。
シロアリが好まない樹木を使用する
樹木の中には、シロアリが好まないものがあります。
例えば、下表の樹木は防蟻効果のある成分を含んでいるため、シロアリが寄りつかない傾向があります。
樹木の種類 | 樹木に含まれる防蟻効果がある成分 |
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ヒバ | ヒノキチオール |
ローズウッド | モノテルペンアルコール類 |
ヒノキ | ヒノキオールなど |
スギ | デルタカジネン |
ただし、これらの樹木に含まれる防蟻成分は中心部分の心材でないと弱くなり、十分な効果が期待できません。また、すべてのシロアリがこれらの樹木を好まないわけではないため、注意が必要です。
例えば、アメリカカンザイシロアリはスギ・ヒノキを好んで食べる傾向があります。
また同じ種類の樹木でも、国産と外国産では防蟻効果が異なる場合があります。
シロアリ対策で使用する樹木の種類を限定する際は、建設会社や工務店の担当者に話を聞き、慎重に選びましょう。
木の心材を使う
家を建てる際に硬い部位の心材を使うと、シロアリ被害を抑えられる場合があります。
シロアリは組織が詰まった硬い心材を避けて、やわらかい辺材を好んで食べる傾向があります。
以前は良質な木材が安く豊富に入手できたため、心材だけで家を建てることが一般的でしたが、今は木材の価格が高くなったため、コストを抑える目的で辺材も多く使われるようになっているのが現状です。
シロアリ被害を防ぐために心材にこだわりたい場合は、建設会社や工務店の担当者に相談してみましょう。
木材に定期的に防蟻処理をおこなう
専門業者に依頼できる防蟻処理には、次のものがあります。
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薬剤散布(木部・土壌)
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防蟻シートの施工
一般的に、防蟻処理としておこなわれるのが多いのは薬剤散布です。木部の表面に薬剤を散布して浸透させ、シロアリ被害を防ぎます。
被害箇所を見つけた際は、木材に穴をあけて薬剤を注入すると、内部に潜むシロアリを死滅させることが可能です。
また、床下の土壌にも薬剤を散布することで防蟻層を形成できます。これは防蟻シートと同様の目的でおこなわれ、シロアリが地中から家へ侵入するのを防ぎます。
木造建築は5年ごとを目安に定期的な防蟻処理が望ましい
一般的な防蟻処理に使われる薬剤の効果は5年程度のため、5年に一度を目安に定期的な防蟻処理が必要となります。
また、木造建築を建てる際は、防蟻処理の施工が建築基準法で義務づけられています。
【建築基準法施工令49条2】
構造耐力上主要な部分である柱、筋かい及び土台のうち、地面から一メートル以内の部分には、有効な防腐措置を講ずるとともに、必要に応じて、しろありその他の虫による害を防ぐための措置を講じなければならない。
e-Gov法令検索「建築基準法施工令」
新築の場合は、築5年を最初の目安にし、そこから5年経過するごとに防蟻処理をおこないましょう。
防蟻処理の費用相場
専門業者による防蟻処理の費用相場は、1坪当たり約5,000~10,000円です。30坪の住宅の場合、約150,000円~300,000円かかることが想定されます。
実際にかかる費用は、建物の構造や床下の状況や施工内容によって異なるため、事前に作業員が住宅の調査をおこない見積もりが提示されます。
また、防蟻処理は基本的にシロアリがいない状態でおこなうことが必要になります。
すでに木材に被害箇所がある場合、最初に薬剤注入等で駆除をおこない、必要であれば補修や補強作業をした後に防蟻処理をすることになるケースが多いです。
その際、駆除、補修・補強、防蟻処理を一括して請け負う業者に依頼すると、状況が共有されて作業がスムーズに進みやすく、別々の業者に依頼するよりも費用が抑えられます。
業者の選び方や費用の相場については、こちらの記事で詳しく解説しています。
まとめ
シロアリはセルロースを栄養源にしており、そのセルロースを多く含む木材をエサにしています。やわらかく水分を含んだ木材を好んで食べますが、同じくセルロースを含む新聞紙やダンボール、畳や衣類などを食べることもあります。
木材へのシロアリ被害を予防するためには、床下の通気性を高めて除湿を促すことや、住居周辺に木材やダンボールを放置しないことが重要です。
さらに5年を目安に定期的に防蟻処理をおこない、住居の木材へシロアリを寄せ付けないようにしましょう。