断熱材は、室外の暑さや寒さを室内に伝わりにくくしたり、断熱性を高めたりすることができます。
本記事では、断熱材の効果について詳しく解説し、断熱材の種類や断熱工法も合わせて紹介します。
断熱リフォームを検討中の人や断熱材の効果を知りたい人は、ぜひ参考にしてみてください。
断熱材とは
熱の伝わりを遅らせて外部の温度が内部に伝わりにくくする素材を「断熱材」と呼びます。断熱材は、建物の外部に面する天井や床、壁、屋根などに使用されています。
断熱材を使用することで、外部の熱や冷気の伝達が遅くなり、建物内部を快適な温度に保ちやすくしてくれるのです。
建物内部と外部の空気の流れが妨げられるため、夏は涼しく冬は暖かく過ごせます。
断熱材の効果
断熱材には、熱の伝達を遅らせるだけでなくカビの予防や光熱費の節約など、さまざまな効果があります。
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適正温度を保ちやすくなる
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結露の発生を防ぎカビの予防ができる
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光熱費の節約に繋がる
適正温度を保ちやすくなる
断熱材を使用して断熱性が高まると、室内の熱や冷気を逃がしにくくなり、適切な室温を保ちやすくなります。
また、室内であっても温度差のある場所を行き来すると、血管に大きな負担がかかり、ヒートショックを起こしてしまう恐れがあります。
建物全体が適正温度に保たれることで、ヒートショックは起きにくくなるのです。
結露の発生を防ぎカビの予防ができる
建物の内部と外部の間に断熱材があると、内部の暖かい空気と外部の冷たい空気が触れ合いにくくなるため、結露が発生しづらくなります。
結露はカビを発生させる原因の1つであり、さらにカビを餌にするダニの発生も促してしまいます。そのため、喘息やアトピーの原因となる恐れもあるのです。
光熱費の節約に繋がる
断熱材は外部の空気を室内に伝わりにくくする効果があります。夏も冬も室温を安定させるため、消費電力を抑えることが可能です。
余分な消費電力がかからない分、光熱費が安くなるため、結果的に家計の節約に繋がります。
断熱材の種類
断熱材の種類 | 代表的な種類 |
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繊維系断熱材 | 【鉱物系】 ・グラスウール ・ロックウール 【天然系】 ・セルロースファイバー ・インシュレーションボード |
天然素材系断熱材 | ・ウールブレス(羊毛) ・炭化コルク |
発泡プラスチック系断熱材 | ・フェノールフォーム ・ポリスチレンフォーム ・硬質ウレタンフォーム |
繊維系断熱材
繊維系断熱材には、鉱物系と天然系の2種類があります。
「グラスウール」や「ロックウール」といった鉱物系は、不燃性で吸音性に優れていますが、湿気には弱いです。
「セルロースファイバー」や「インシュレーションボード」といった天然系は、吸音性に優れており、湿気にも強いのが特徴です。しかし、鉱物系の素材と比較すると価格は高くなります。
【グラスウール】
ガラスを溶解して繊維状に加工したもので、種類によって厚みや細さが異なります。繊維が細かく、密度が上がるほど空気をよく含むため、断熱効果が高くなります。
【ロックウール】
玄武岩や鉄鋼スラグが主原料です。高温で溶かして繊維状に加工したもので、耐熱性に優れており、燃えにくいといった特徴があります。
【セルロースファイバー】
新聞紙やおがくず、段ボールなどを粉砕して綿状にした断熱材です。素材自体が持つ吸放湿性が高く、吸音性にも優れています。
【インシュレーションボード】
廃木材などの植物繊維に合成樹脂や接着剤を混ぜて乾燥させたボード状の断熱材です。吸音性に優れており、軽く加工がしやすい素材です。
天然素材系断熱材
「ウールブレス(羊毛)」や「炭化コルク」といった天然素材系は、防虫や調湿の効果に優れているのが特徴です。
【ウールブレス(羊毛)】
ウールカーペット製造時の端材や羊毛を使用した衣服をリサイクルし、防虫加工を施した断熱材です。吸湿性、耐久性が高く、断熱材の中では比較的新しい素材です。
【炭化コルク】
コルク栓を作る際に出た端材を利用して作られており、調湿性、吸音性に優れているのが特徴といえるでしょう。原料のコルク樫には、ダニを寄せ付けない性質があります。
発泡プラスチック系断熱材
「フェノールフォーム」や「ポリスチレンフォーム」などの発泡プラスチック系断熱材は、耐久性や不燃性に優れています。
【フェノールフォーム】
フェノール樹脂に発泡剤や硬化剤を加えたものです。不燃性が高く、有毒ガスがほとんど発生しません。
【ポリスチレンフォーム】
ポリスチレン樹脂を発泡させた断熱材です。断熱性能が高く水や湿気にも強い反面、防火性は高くありません。
【硬質ウレタンフォーム】
ポリウレタン樹脂に発泡剤を加えたものです。素材の気泡の中に含まれるガスが熱の伝達を抑えるため、断熱性に優れています。
断熱工法の種類
断熱工法の種類は「内断熱」と「外断熱」の2つに分けられます。さらに、「内断熱」と「外断熱」の両方を施工する「付加断熱」があります。
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内断熱(充填断熱)
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外断熱
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付加断熱
内断熱(充填断熱)
内断熱とは、柱や壁の間に断熱材を敷き詰める工法で「充填断熱工法」とよばれています。
壁の内側に施工するため、新たに断熱スペースを作る必要はありません。外断熱と比較して施工しやすく、コストも抑えられます。
ただし、柱部分をよけながら断熱材を敷き詰めるため、断熱材が途切れる箇所があり気密性を確保しにくい点がデメリットです。
また、壁内に結露が発生すると断熱材を劣化させる原因となるため、気流止めの構築や防湿フィルムを貼るといった施工が必要になります。
外断熱
外断熱とは、コンクリートの建物の外を断熱材で包み込む工法です。
家の外側に施工するため、柱などで途切れることがありません。家全体を覆うので、気密性が高まり、結露が発生しにくくカビも抑えられます。
ただし、断熱材の重さで外壁が垂れ下がる可能性があるため、あまり厚く施工できない点がデメリットです。また地震や強風などで外装材が緩んだり、変形したりすることがあります。
付加断熱
付加断熱とは、「内断熱」と「外断熱」の両方を施工する方法です。
内側と外側から断熱するため断熱性が高まりますが、その分コストも高くなります。
断熱工事を依頼する際の注意点
断熱工事は、費用も時間もかかる大掛かりな施工です。そのため、業者選びや断熱材・施工方法を決める際には慎重におこないましょう。
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おすすめの断熱材や施工方法は状況や業者によって異なる
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悪質な断熱工事をおこなう業者もいる
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断熱工事は大規模になる場合もある
おすすめの断熱材や施工方法は状況や業者によって異なる
断熱材や施工方法はそれぞれメリット・デメリットがあるため、どれが1番とはいえません。
建物の状況や建っているエリア、業者の考え方・得意とする分野によっておすすめの断熱材・施工方法は異なります。
そのため、1つの業者のみではなく複数の業者に相談し、提案を比較して決めるとよいでしょう。
悪質な断熱工事をおこなう業者もいる
断熱工事をおこなっている業者はたくさんあります。しかし、中には悪質な業者もいるため業者選びは慎重におこなうことが大切です。
断熱材は隙間があると気密性が低くなり、外部の空気を室内に伝わりやすくしてしまいます。
悪徳な業者の中には高額な料金を請求しておいて、実際におこなわれた工事では隙間だらけで断熱材の効果が実感できないというケースもあるようです。
効果を実感できないどころか、断熱材に隙間があると結露が発生して家を傷めてしまう可能性があります。
また突然訪問してきて不安をあおり、契約を勧めてくる業者や、安すぎるプランなどを提案してくる業者の話を信じてすぐに契約してはいけません。
断熱工事を依頼する業者を選ぶ際は、事前に実績や評判・口コミを確認して悪質な業者に気をつけましょう。
断熱工事は大規模になる場合もある
断熱工事は床や壁を外しておこなうため、大規模なリフォーム施工になることがあります。
断熱材を入れる工賃だけでなく、床や壁の解体・補修などの費用も発生するため、コストが高くなったり工期が長期間に及んだりします。
壁に断熱材を入れる場合は外側からなのか内側からなのか、どのくらいの範囲なのかによって、2週間~1ヶ月程度の工期が必要になるため、おおよその期間を最初に聞いておいたほうが良いでしょう。
床下断熱「ヒートマジックシステム」もおすすめ
床の冷えには床暖房やマット状・ボード状の断熱材を使用する方法があります。
しかし、床暖房は限られた部屋にしか施工できなかったり、マット状・ボード状の断熱材は建物構造材との間に隙間ができやすいため気密性が低く、断熱性があまり高くなかったりします。
ヒートマジックシステムは床下全面に泡状の断熱材を直接吹き付けるので、隙間ができず気密性が高まり、室内全体の温度を保つことが可能です。
また、床下に潜って施工するため、床を剥がしたり家具の移動をしたりする必要がありません。施工する面積にもよりますが、最短1日で完了できます。
さらに泡状の断熱材は、自己接着性と柔軟性があるため剥がれ落ちる心配がなく、定期的な再施工や取り換えの必要もありません。
耐久性も高く、長期間にわたり気密性や断熱性の効果を発揮します。
まとめ
断熱材は、外の温度を建物の内側に伝わりにくくする効果があり、室内の快適な温度を保ちやすくなります。
大きく分けて「繊維系断熱材」や「天然素材系断熱材」「発泡プラスチック系断熱材」などの種類があり、メリット・デメリットや価格はそれぞれです。
断熱工事は施工方法によっても異なりますが、床や壁を剥がしてからおこなう場合は1ヶ月程度の期間が必要になる場合もあります。
手軽にできる施工ではないため、失敗や後悔のないよう断熱工事の業者を選ぶ際は複数の業者を比較するとよいでしょう。