住宅の床下や壁などに、地面から垂直にのびる、茶色い土のようなトンネルを見かける事がありますが、それはシロアリの「蟻道」があります。

ただし、蟻道をつくる、あるいはシロアリの蟻道に似た巣をつくる昆虫はシロアリ以外にも存在します。

蟻道を発見したものの、本当にシロアリのものか判別できず、不安を感じている人もいるのではないでしょうか。

この記事では、シロアリが蟻道を作る理由や、ほかの昆虫の蟻道や巣との違い、また、シロアリの蟻道を発見しやすい場所や、発見した場合の対処法を分かりやすく紹介します。

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シロアリはなぜ蟻道を作る?

国内に生息するシロアリの多くは、直射日光や乾燥を嫌い、床下などの木材やコンクリートの表面に半円状の土のトンネルを作り、その中を移動します。

蟻道には、エサである木材を探したり運んだりする以外に、クロアリなどの外敵から身を守る役割もあります。

また、イエシロアリが水を運ぶのに利用するなど、シロアリにとっては重要なライフラインと言えるでしょう。

蟻道は、シロアリが好む高温多湿な床下で見つかることが多く、住宅内の木材を目指して造成されます。

蟻道の形状や作る場所

シロアリの蟻道には様々な形状が見られます。また、蟻道を作る場所は木材だけではなくコンクリートの表面などにも作られます。

シロアリの種類によって形状が異なる

国内で住宅に被害を与えるシロアリの中で、蟻道を作るのはイエシロアリとヤマトシロアリの2種類です。

一方、比較的乾燥に強いアメリカカンザイシロアリとダイコクシロアリは、蟻道を作りません。

イエシロアリの蟻道は幅が横に広いのが特徴で、固定された塊状の巣を起点にして蟻道をのばし、行動範囲を広げて被害を深刻化させます。

ヤマトシロアリの蟻道は、細長いひも状をしています。行動範囲はあまり広くありませんが、湿った場所を求めて蟻道をのばし、住宅全体に被害を拡大させることがあります。

種類 蟻道の形状
イエシロアリ 横幅が広い塊状の巣をつくる
ヤマトシロアリ ひものように細長い
アメリカカンザイシロアリ 蟻道をつくらない
ダイコクシロアリ 蟻道をつくらない

木材やコンクリート基礎にも作る

シロアリは好物の木材以外に、コンクリートの表面にも蟻道を作るのが特徴です。

気温や湿度などの変化によって、コンクリートにひび割れが発生し、その隙間からシロアリが侵入することがあります。

またベタ基礎の場合も、水抜き穴や配管周りから蟻道を作って侵入してくることもあります。

とくに経年劣化によって、シロアリの侵入確率は高まる傾向にあるため、定期的なメンテナンスは必要です。

空中に蟻道を作ることもある

シロアリは、建物の木材やコンクリートの表面以外にも、空中に蟻道を作ることもあります。

シロアリは目が退化しているため、ぶつかった場所を壁と判断する習性があります。

移動途中で石などの障害物にぶつかると、そこを壁と勘違いし、そこから上に向かって延びる煙突のような蟻道を作るのです。

空中蟻道は、壁に這うように作られた蟻道に比べてバランスが良くありません。その多くは、重力に耐えかねて天井に届かず、途中で折れているケースが多いです。

蟻道の見分け方

シロアリ以外にも蟻道を作ったり、蟻道によく似た巣をつくったりする昆虫がいます。それぞれの特徴を確認して、蟻道の判別に役立てましょう。

種類 蟻道や巣の特徴
シロアリ
  • 固くて頑丈
  • シロアリの排せつ物と木材のカス、土を練り込んだ「蟻土」でできている
  • 途中で途切れていないことが多い
クロアリ
  • 柔らかくてもろい
  • 主な主成分は木くず
  • 途中で途切れている場合が多い
ジグモ
  • 筒形の巣をつくる
  • 柔らかくフワフワして崩れやすい
  • 白いクモの糸が混じっている

シロアリの蟻道は固くて頑丈

シロアリの蟻道は、排せつ物と木材のカス、土などを練り込んだ「蟻土」でできており、クロアリの蟻道よりも強度があります。

そのため、指で押しても崩れにくく、途中で蟻道が途切れていないことが多いです。

クロアリの蟻道は柔らかくてもろい

クロアリの中でも、乾燥に弱いトビイロケアリは蟻道を作ることがあります。

クロアリの蟻道は、そのほとんどが木くずからできており、シロアリの蟻道に比べるとやわらかく、触ると崩れやすいのが特徴です。

そのため、シロアリの蟻道のような長いトンネルではなく、途中でぼろぼろと途切れていることが多いです。

ジグモの巣はフワフワして白っぽい

土の中に生息するジグモは、エサを求めて、地中から地上に巣をつくる習性があります。巣の形状は、シロアリの蟻道と同じ半胴円形です。

土でできていますが、白っぽいクモの糸が混じっており目視で確認できます。また、シロアリやクロアリの蟻道と異なり、触れるとフワフワしているのが特徴です。

崩れやすくもろいので、少し触って確かめてみるとよいでしょう。

蟻道を発見しやすい場所

※イエシロアリの巣に繋がる蟻道

ここでは、シロアリの蟻道を発見しやすい代表的な場所を紹介します。

 シロアリの蟻道を発見しやすい場所
  • 基礎の立ち上がり部分

  • 配管の隙間

  • 束石・床束

  • 断熱材

基礎の立ち上がり部分

基礎の立ち上がり部分は、シロアリの蟻道が最も発見しやすい場所です。シロアリは、エサを求めて地中から蟻道をのばし、住宅内の木材に侵入します。

前述した布基礎はもちろん、ひび割れを起こしやすいモルタル、すきまができやすいタイル素材でできた基礎の場合も、シロアリが侵入しやすいため、十分注意が必要です。

また、害虫に強いと言われるベタ基礎であっても、経年劣化によってわずかな隙間が生じ、シロアリの侵入を許す可能性があります。

配管のすきま

床下には水道やガスの配管を通すための、貫通穴(配管スリーブ)があります。

貫通穴は住宅内の壁に繋がっており、配管を通した後の処理が不十分な場合、シロアリが蟻道を作ってすきまから侵入するケースが少なくありません。

また、配管の水漏れにも注意が必要です。湿気を好むシロアリにとって、湿度が高く木材がある床下は、好都合の環境となります。

排水管にゴミが詰まると水漏れしやすいため、普段から水漏れ対策は万全に行いましょう。

束石・床束

一定の間隔で、床下に配置されている束石(つかいし)や床束(ゆかづか)も、シロアリが蟻道を作りやすい場所のひとつです。

凸型の束石の上に床束を配した土台で、「布基礎」施工の土台として多く使用されています。

地中から束石に蟻道をのばし、木材の床束に穴を開けて住宅の内部に侵入するのが一般的です。

断熱材

断熱材は柔らかい素材のため、シロアリがかじって内部に侵入し、蟻道を放射線状に張り巡らす事例が多く見られます。

特に、床下の基礎部分を断熱材で密閉する「基礎断熱住宅」は、シロアリの侵入に十分注意しましょう。

基礎断熱住宅は、床下の気温を一定に保つため冬でも暖かく快適に過ごせるのがメリットです。

しかしシロアリも暖かい環境を好むため、高温多湿な床下は格好のすみかとなります。

蟻道を発見した時の対処法

最後に、蟻道を発見した場合の対処法を紹介します。被害を最小限に食い止めるためにも、蟻道を見つけたら、なるべく早めに行動しましょう。

シロアリの蟻道か確認する

まずは、蟻道の形状や硬さを調べて、シロアリが作った蟻道かを確認します。

蟻道の横幅が広く、土の塊のように見える場合や、細長いひも状の場合は、シロアリのものである可能性が高いでしょう。

また、ロアリの蟻道は触れると硬くて崩れにくく、蟻道が途中で途切れていないのが特徴です。

反対に、触れると簡単にボロボロと崩れる場合は、クロアリが作った蟻道の可能性があります。自分で判断が難しい場合は、専門業者に相談してみるとよいでしょう。

専門業者の選び方や依頼した際の費用の相場はこちらの記事で詳しく解説しています。

蟻道はなるべく崩さない

触れて固さを確認する際は、なるべく蟻道を崩さないようにしましょう。

現在も使用されているのかを確かめるために、蟻道を少し崩す方法もありますが、シロアリが逃げ出して家の各所に移動する恐れがあります。

また、蟻道をすべて崩してしまうと、専門業者に依頼した際、シロアリの種類や巣の位置が確認しづらくなり、駆除作業がスムーズに進まない場合もあります。

被害範囲を特定するためにも、蟻道はできるだけそのままの状態にしておきましょう。

専門業者に駆除を依頼する

シロアリを完全に駆除する場合は、プロである専門業者に依頼することをおすすめします。

シロアリの多くは、直射日光の当たらない木材の中を食い荒らす習性があるため、目に見える蟻道は、行動範囲のほんの一部です。

例えば、イエシロアリの場合、大きな巣を地中に作り、拠点になる分巣を各所に複数作る習性があります。

巣は決してひとつではないため、自分で目視できる巣や蟻道を駆除しても、それは一時しのぎに過ぎないのです。

シロアリの蟻道を発見したら、被害が拡大する前に、信頼できる専門業者に駆除を依頼しましょう。

まとめ

シロアリの多くは直射日光や乾燥を嫌うため、木材やコンクリートの表面に「蟻道」と呼ばれる半筒円状のトンネルをつくり、行動範囲を広げます。

シロアリの蟻道は、基礎の立ち上がり部分や、配管の隙間、束石や床束などに作られることが多く、触れると固くて頑丈なのが特徴です。

また、シロアリは、コンクリート基礎でも蟻道を構築します。わずかなひび割れがあれば、簡単に侵入することができるため油断はできません。

シロアリの蟻道を発見したら、被害を広げないためにも、なるべく早めにプロの専門業者に駆除をお願いしましょう。