そもそも住宅にメンテナンスは必要なのか、どのタイミングでおこなうべきなのか、など詳しく知っている人は少ないのではないでしょうか。
この記事では築年数の経過で住宅に起こる症状を解説し、場所別に必要なメンテナンス内容と費用を紹介します。
さらに費用を抑えるためのポイントも紹介するので、住宅のメンテナンスを考えている人は、ぜひ参考にしてください。
戸建て住宅にメンテナンスは必要?
住宅は適切なタイミングでメンテナンスをすることで、本来の性能を長く維持して劣化を防いだり、資産価値を高めたりできます。
特に雨風にさらされる屋根や外壁、毎日使う浴室やキッチンなどは時間が経過するほど劣化が進む場所です。
不備がでてくると生活にも支障をきたしやすいので、定期的に点検やメンテナンスをおすすめします。
また税金や住宅ローンの金利、補助金などでさまざまな優遇措置を受けられる「長期優良住宅」に認定されると、定期点検および、調査・修繕・改良が義務化されます。
定期的に点検、修繕などのメンテナンスをおこなうと、住宅をより長持ちさせることができるのです。
住宅の寿命の目安
法定耐用年数は、構造別に見ると木造22年・鉄骨造19年~34年・RC造(鉄筋コンクリート造)47年に設定されています。
ただし、これは税法上の減価償却費を計算するために算出された数字で、実際の耐久年数ではありません。
国土交通省の調査によると、日本の住宅が建てられてから取り壊されるまでの平均年数は約30年です。
ただし、メンテナンスすることで長持ちしている家も多くあります。
参照:国土交通省「長持ち住宅の手引き」
参照:東京都主税局「減価償却試算の耐用年数表」
築年数の経過によって起こる症状
木造住宅で10年・20年~30年・40年と、築年数が経過した際に発生しやすい劣化内容をみていきましょう。
築年数 | 発生しやすい劣化内容 |
---|---|
築10年 | ・屋根材や外壁材の剥がれ・ひび割れ・錆び付き・バルコニーのゆがみ・破損・壁紙やクロスの汚れ・はがれ・水回り設備の不具合 |
築20年~30年 | ・屋根材の腐食・外壁材の剥離・柱や梁に腐食・シロアリ被害による構造体のゆがみ・バルコニーの水漏れ・故障・フローリングにきしみ・反り・雨どいのゆがみ・浴室・洗面・トイレ・キッチンなどの故障・ドア・サッシ・玄関などの劣化 |
築40年 | ・屋根・外壁の破損・断熱材の性能低下・フローリングの破損・雨どいの破損・浴室・洗面・トイレ・キッチンなどに交換が必要な故障・ドア・サッシ・玄関などの故障・給排水管の水漏れ・サビの発生・電気配線・コンセント・スイッチの故障 |
気温や天候の影響を受けやすい屋根や外壁・バルコニーは築10年くらいで劣化が目につくようになるでしょう。
また、毎日使用するキッチンや浴室、トイレなどの水回りも水漏れが発生したり、キズや汚れなどが落ちづらくなります。
築20年~30年になると、屋根や外壁の防水性能が低下して構造体に問題が発生するほか、壁紙・クロス・フローリングなど室内の劣化が進み、多くの設備が寿命を迎えます。
そして、何のメンテナンスもせずに40年をむかえた住宅は、室内外のさまざまな場所で破損が進み、設備は正常に使用できなくなるのです。
【場所別】メンテナンスにかかる費用とタイミング
場所別のメンテナンス内容と、それにかかる費用をみていきましょう。
構造体
住宅の基礎部分や壁・柱・梁などに必要なメンテナンス内容とタイミング、費用相場は次のとおりです。
メンテナンス内容 | タイミング | 費用相場 |
---|---|---|
基礎部分・壁・柱・床・梁への防蟻処理 | 5年~10年ごと | 1平米あたり1,800円~3,000円 |
基礎部分コンクリート補修 | 10年ごと | ひび割れ1箇所あたり15,000円~30,000円 |
一般的な防蟻処理の効果は5年間なので、5年を目安に防蟻処理をおこなうのが理想的です。
また、基礎部分のひび割れはコンクリートの劣化を早める原因となるほか、シロアリの侵入経路となる可能性が高いので、定期的にチェックして不備があればメンテナンスを依頼しましょう。
屋根
屋根のメンテナンスに必要な内容とタイミング、費用相場は次のとおりです。
メンテナンス内容 | タイミング | 費用相場 |
---|---|---|
屋根の重ね葺き・葺き替え | 25年~35年ごと | 1平米あたり9,000円~11,000円 |
屋根の表面塗装 | 10年~20年ごと | 1平米あたり1,500円~5,500円 |
防水工事 | 5年~15年ごと | 1平米あたり4,500円~8,500円 |
屋根のメンテナンス費用は屋根の勾配や作業工程、使用する屋根材の種類などで変化します。
また、雨や雪が多い地域や台風が多い地域、海が近い地域の住宅は、機能性の高い特殊塗料を使用するため、相場よりも費用が高くなる可能性もあります。
外壁
外壁のメンテナンス内容とタイミング、費用相場は次のとおりです。
メンテナンス内容 | タイミング | 費用相場 |
---|---|---|
塗装の塗り替え | 10年ごと | 30坪の住宅で850,000円~120万円 |
タイル洗浄・目地欠損部の充填 | 10年ごと | タイル洗浄:1平米あたり250円~400円 コーキング打ち換え:1メートルあたり1,000円~1,500円 モルタル補修:1箇所あたり600円→900円 |
サイディング・ALC外壁の塗装や張り替え | 塗装: 10年~20年ごと 張り替え: 25年~35年ごと |
30坪の住宅の塗装: サイディング700,000円~120万円/ALC100万円~250万円 30坪の住宅の張り替え: サイディング250万円~360万円/ALC180万円~300万円 |
費用は外壁材の種類や作業面積などで変化します。
外壁塗装のはがれや目地の欠損は、雨水を浸透させて壁や柱などを腐食し、住宅の不具合を拡げる要因になるため、定期的に点検して見落とさないようにしましょう。
バルコニー
バルコニーのメンテナンス内容とタイミング、費用相場は次のとおりです。
メンテナンス内容 | タイミング | 費用相場 |
---|---|---|
トップコートの塗り替え | 5年~10年ごと | 1平米で4,000円~8,000円 |
防水層の増し張り・張り替え | 10年~20年ごと | 1平米で6,000円〜12,000円 |
バルコニーのトップコートは5年ごとに塗り替えることで、防水層を守り劣化を防げます。
また、防水層には主に合成ゴムシートや塩化ビニールシートが使われており、それぞれ紫外線や熱に強い特徴があります。
ただし、どちらの素材も10年を過ぎると急激に劣化が進むので、増し張りや張り替えが必要です。
外部建具
玄関・サッシ・網戸などのメンテナンス内容とタイミング、費用相場は次のとおりです。
メンテナンス内容 | タイミング | 費用相場 |
---|---|---|
玄関のドアの修理・交換 | 不具合が発生したら | 修理:15,000円~ 交換:300,000円~800,000円 |
サッシの修理・交換 | 不具合が発生したら | 修理:10,000円~ 交換:1箇所70,000円~600,000円 |
網戸の張り替え・交換 | 不具合が発生したら | 張り替え:1枚2,500円~8,000円 交換:30,000円~50,000円 |
玄関のドアやサッシ、網戸を使用していて違和感に気づいたら、早めに修理・交換しましょう。無理に使い続けると、破損の原因になります。
室内
壁紙・フローリング・畳などのメンテナンス内容とタイミング、費用相場は次のとおりです。
メンテナンス内容 | タイミング | 費用相場 |
---|---|---|
壁紙・クロスの補修・張り替え | 5年~10年ごと | 部分補修1箇所:15,000円~30,000円 全体張り替え:450,000円~900,000円 |
フローリングの補修・重ね張り | 5年~10年ごと | 部分補修:1平米で約15,000円 重ね張り:10畳分で200,000円~300,000円 |
畳の張り替え・交換※ | 3年~4年で裏返し 5年~6年で表替え 10年ごと交換 |
裏返し:12,000円~30,000円 表替え:24,000円~90,000円 交換:48,000円~150,000円 |
居住者が喫煙する場合の壁紙や、ヒーターやホットカーペットの熱の影響を受けた畳など、生活スタイルによってはより早いタイミングでメンテナンスが必要となる場合があります。
住宅設備
浴室・洗面・トイレ・キッチンなどのメンテナンス内容とタイミング、費用相場は次のとおりです。
メンテナンス内容 | タイミング | 費用相場 |
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浴室・洗面・トイレ・キッチンの修理・交換 | 浴室交換約20年 洗面・トイレの交換15年~20年 キッチン交換約20年 |
修理:1箇所約15,000円~ 交換: ユニットバス700,000円~180万円 洗面台150,000円〜250,000円 トイレ150,000円~500,000円 システムキッチン120万円~200万円 |
給湯器の修理・交換 | 交換は10年~15年ごと | 修理:1回7,000円~9,000円 交換: ガス55,000円~130,000円 エコキュート400,000円~500,000円 |
排水管の高圧洗浄・水漏れ修理・部品交換 | 不具合が発生したら (高圧洗浄は5年~10年ごと) |
高圧洗浄:3メートル以内で約40,000円 水漏れ修理・部品交換:1箇所約8,000円~ |
浴室・洗面・トイレ・キッチンなどの住宅設備は、不具合が生じた時点での修理・交換が理想的です。
それぞれの設備の耐用年数をチェックし、定期的に点検・メンテナンスをしましょう。
メンテナンス費用をなるべく抑えるには
メンテナンス費用を抑えるには、不具合が小さいうちの修理することと、築10年以内の点検がポイントです。
不具合が生じたら早めに修理をする
定期的に点検をおこない、不具合が生じたらすぐにメンテナンスをすることで、必要な費用を抑えられます。
たとえば、屋根や外壁などの小さな欠損部をメンテナンスせずに放置すると雨水が侵入して、柱や梁なども修理が必要になります。
また、網戸や窓のトラブルを気にせず使い続けると、本体と枠の両方を修理・交換しなければなりません。住宅はさまざまな場所の不具合を拡げないよう、トラブルを見落とさずに早期にメンテナンスしましょう。
屋根や外壁など、普段の生活では不具合に気付きにくい場所も、忘れずにきちんと点検することが大切です。
築10年以内に一度点検をおこなう
点検は築10年を迎える前に受けるのがおすすめです。
住宅品質確保法94条、住宅新築請負契約により、築10年以内の点検で不具合が見つかった際、ハウスメーカーや工務店に瑕疵の補修を請求ができる可能性があります。
ただし、すべての不具合に適用されるわけではありません。
壁紙のはがれやフローリングのキズ、害虫による被害などは品確法の瑕疵担保責任の対象外となることがあります。
参照:国土交通省「住宅の品質確保の促進等に関する法律(平成11年法律第81号)」
まとめ
年月を経ると、住宅はさまざまな場所が劣化していきます。しかし、車の車検制度のように定期的な検査は定められていないため、自分で判断して点検・メンテナンスをおこなう必要があります。
不具合が生じたら早めに修理をすると、修理範囲が拡がらず費用を抑えられるでしょう。
さらに、住宅品質確保法で定められた範囲内であれば、瑕疵の補修を請求できるケースがあります。
定期的にメンテナンスすることで、住宅は長持ちします。築年数の経過に合わせて適切なタイミングでメンテナンスをおこないましょう。