シロアリが住居内に侵入し、木材を食い荒らすと「建物の耐震性」に悪影響を及ぼします。 では、シロアリに対してどのような対策ができるのでしょうか。
この記事ではシロアリの対策が必要な家の特徴について説明し、発生したときの対処法や、寄り付かなくするための予防方法も合わせて紹介します。
【構造別】シロアリ対策が必要な家の特徴
シロアリは土の中を移動しながら、エサとなる木材を探して建物内に侵入してきます。 木造・RC造・鉄骨造のいずれも木材が使用されているため、すべての家が被害の対象となる可能性があります。
木造住宅
木造住宅は主要な部材が木材でできているため、ほかの構造の建物に比べて「シロアリの被害が深刻化する」可能性があります。
新築時には、シロアリの予防対策として防虫処理が施されているケースが多いですが、場合によっては間違った知識の元、こうした予防をしていないケースもあります。
防虫処理が施されていた場合でも、薬剤の有効期限は5年ほどです。
さらに、住宅内で雨漏れが発生している場合、木材に余分な水分を含むことで薬剤が流れてしまい、シロアリの侵入を許してしまう可能性もあります。
以上の点をふまえると、築年数に関わらずシロアリ対策は必要と言えるでしょう。
RC造住宅
RC造住宅でも、「間仕切りの壁や建具などの一部」には木材が使用されているため、シロアリの被害にあう可能性があります。
また、シロアリは「雑食性昆虫」なので、目の前にあるものは本能的にかじる傾向があります。 そのため、RC造住宅に使用されている断熱材がシロアリのエサになることもあるのです。
特に発泡タイプの断熱材は、グラスウールタイプに比べて食害に遭いやすいです。
このような点から、RC造住宅は木造住宅よりもシロアリが発生する可能性は低いものの、決して無縁ではありません。
鉄骨造住宅
鉄骨造の住宅であっても玄関、和室、床を支える柱、床下など、木材が使われている部分はシロアリの被害にあう可能性があります。
鉄骨造は鉄骨の厚みにより、軽量鉄骨構造と重量鉄骨構造に分類されますが、どちらの場合も木材は使用されています。
そのため、RC造住宅と同様に、「シロアリの被害に備える必要はある」と言えるでしょう。
【環境別】シロアリ対策が必要な家の特徴
築年数が同じ場合でも、シロアリの被害に遭いやすい家とそうでない家があります。被害に遭いやすい家は、シロアリにとって生活しやすい条件が揃っている可能性が高いです。
- 床下の換気が悪い
- 雨漏りや水漏れが発生している
- 敷地内に廃材や段ボールを放置している
床下の換気が悪い
シロアリは湿度の高い環境を好むため、床下の換気が悪い家は被害に遭いやすいのです。 もし、換気口の前に物を置いている場合は、空気の流れを遮ってしまい換気が悪くなるので、すぐに移動させましょう。
また、10~30万円程度の費用はかかりますが、床下に換気扇を設置するどの対策を取るのも手段の1つです。
雨漏りや水漏れが発生している
雨漏りや水漏れをそのままにしていると、シロアリが水分を含んだ木材に集まってくるため、まずは、雨漏り・水漏れ箇所をふせぐことが重要です。
また、屋根材のズレや外壁の軽微なひびがあると、雨漏りや水濡れによって木材に水が入りこみやすくなります。 目に見える場所だけに水が染み出るとは限らないため、屋根や外壁に異常がないかも定期的にチェックしましょう。
敷地内に廃材や段ボールを放置している
「家具や廃材などの木材や段ボール」はシロアリの餌となるため、家の敷地内に放置されている場合は、すぐに撤去しましょう。
敷地内にシロアリが集まってくると、その場所を拠点に、家の中に侵入される可能性があります。
シロアリ(羽アリ)が発生した場合の対処方法
家の中でシロアリ(羽アリ)を見つけた場合に、自分でできる対処方法を紹介します。
掃除機で吸い取る
羽アリが発生する時期になると、室内にも侵入してくることがあります。
羽アリを見つけたら、掃除機で吸い取るのが効果的な方法です。 多くの場合は、掃除機で吸い取られる際に圧力で死んでしまいます。
もし掃除機の中で生きていても、生息するために必要な水分がなければ、24時間以内に脱水症状で息絶えます。
また、羽アリは基本的に群飛孔と呼ばれる穴から飛び立つため、掃除機で吸い取った後、近くにシロアリが侵入してきそうな穴が空いていないかを確認してください。
粘着グッズを使用する
床に出てきた羽アリは、粘着ローラーや粘着テープでも駆除できます。 目の前の羽アリを駆除した後は、侵入経路になる隙間がないかを確認し、隙間を見つけた場合は、新たな侵入を防ぐために粘着テープでふさぎましょう。
シロアリを家に侵入させないための予防対策
シロアリの被害を防ぐためには、住居内に侵入させないことが大切です。ここからは、シロアリを侵入させないための対策について解説します。
シロアリが入ってくる隙間をふさぐ
シロアリはコンクリートのわずかな隙間からでも侵入する可能性があります。 外壁や床下などのコンクリート部分にひび割れがある場合は、粘着テープでふさいでおきましょう。
木材や段ボールを家の周りに放置しない
シロアリは、好物の「木材やダンボール、畳」などが豊富に置いている場所を見つけると、仲間に知らせ大群でやってきます。
そのため、湿った古い木の杭や枕木、使わない木材やダンボールなどの餌になりそうなものを、家の周りに置いてある場合は撤去しましょう。
湿度が高くならないようにする
シロアリは湿度が高い場所を好むため、家の中に湿気が溜まらないようにすることが重要です。
- 床下の換気口を開けておく
- 調湿剤を散布する
- 壁面に接した家具の風通しを良くする など
床下の換気口の前に物を置いていると、空気の流れが滞ってしまう原因となります。換気口の前に物を置いている場合は撤去しましょう。
調湿剤は湿度が高くなったときに湿気を吸着し、乾燥したときに放出させる効果がある薬剤です。調湿剤を散布することで、湿度を調整することが可能です。
また、壁面に接した家具と壁の隙間を空けることで、空気の流れを良くして湿気を防ぐ効果があります。
シロアリはどのような場所に巣を作る?
シロアリはどのような場所に巣を作るのでしょうか。シロアリが巣を作りやすい条件について見ていきましょう。
3つの条件が揃う場所を好む
シロアリが巣を作りやすい場所として、おもに3つの条件があります。
- エサがある
- 湿度が高い
- 生息に必要な水分がある
シロアリは雑食性の昆虫ですが、木材を主食とし、段ボールや枯れた植物なども餌とします。
また、湿度が高く水分がある場所なら、どこにでも巣を作る可能性があります。キッチンや浴室などの水回りはシロアリにとって好条件が揃った環境といえるでしょう。
シロアリの巣の特徴
現在、国内には25種類前後のシロアリが生息していますが、家に被害を与えるのは「ヤマトシロアリ・イエシロアリ・アメリカカンザイシロアリ」の3種類です。
ヤマトシロアリ
ヤマトシロアリは一部のエリアを除いた全国各地に生息しており、食い荒らした木材の内部に巣を作ります。 1つの巣に生息する個体数は、20,000~30,000匹程度です。
シロアリの中でも特に湿度が高い場所を好むため、床下に巣を作ることも多いです。
イエシロアリ
※土の中の巣から伸びた蟻道
イエシロアリは、本州南岸以南の沿岸部に生息しています。自分たちで水分を運ぶことができるため、多少乾燥した場所でも生息が可能です。 地中に大きな土の塊の本巣を作り、そこを中心として巣を広げていきます。
イエシロアリの個体数はシロアリの中でも群を抜いており、1つの巣に100万匹が生息していることもあります。 さらに、食害のスピードも速いため、ほかのシロアリに比べて被害が拡大しやすいのです。
アメリカカンザイシロアリ
※アメリカカンザイシロアリは巣の近くに糞を落とす
アメリカカンザイシロアリは北米の西海岸に生息しています。日本でも1975年に確認されて以降、多くのエリアに生息しており、乾燥した場所でも巣を作ることが可能です。
食害した場所にそのまま巣を作り、床下のほかに屋根裏や天井裏などで発見されることもあります。 ヤマトシロアリやイエシロアリと比べると個体数が少なく、最大でも2,000匹程度です。
ただし蟻道を作らないため、発見が難しく、気づいたときには木材の劣化が激しくなっていることもあります。
また、アメリカカンザイシロアリは擬職蟻と呼ばれる独自の生態系を作ります。 通常のシロアリは成長過程で分化し、成熟した後はほかの階級に変化することはありません。
アメリカカンザイシロアリはいつでも分化できるため、本巣と分巣が切り離されても新たに体制を立て直すことが可能です。 そのため、ほかの種類に比べて完全な駆除が難しいと言われています。
シロアリの駆除は専門業者へ依頼を
家の中に発生した羽アリは、掃除機や粘着グッズなどで対処可能ですが、一時的な対処に過ぎないため、巣を取り除くなど完全に駆除するのは難しいです。
また、「屋根裏や天井裏などの確認しづらい場所に巣を作っている」可能性もありますこうした自分では点検するのが難しい場所に巣を作るため、不審な点がある場合は専門業者に相談することをおすすめします。
依頼する業者の選び方や駆除の費用についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
まとめ
シロアリの被害は、建物の構造に関わらず発生する可能性があります。また、新築の場合も対策が不要というわけではありません。
もし、家の中にシロアリ(羽アリ)が発生した場合は掃除機で吸い取る方法が有効です。その後、シロアリの侵入経路がないかを確認し、粘着テープなどでふさいでおきましょう。
ただし、目に見えるシロアリを駆除しても、シロアリの巣を駆除しないと再び家の中に侵入される恐れがあるため、専門業者に床下の点検を依頼することをおすすめします。