住宅の中や周辺で、今まで見かけなかった大量の羽アリを目にして、不安に感じている人がいるかもしれません。
羽アリにはシロアリとクロアリの2種類が存在します。
クロアリの場合は、住宅に害を及ぼすことはありませんが、家の木材を食い荒らすシロアリの場合、被害が拡大する前に適切な処置が必要です。
ここでは、シロアリとクロアリの見分け方をはじめ、羽アリが及ぼす被害の影響や羽アリの発生原因、また、自分でできる羽アリの駆除方法などを紹介します。
羽アリの見分け方
羽アリには、住宅の木材を食べるシロアリと、糖類や動物性たんぱく質などを餌にするクロアリの2種類がいます。
また、クロアリは生物学上ハチの仲間、シロアリはゴキブリの仲間に分類されます。
シロアリとクロアリを見分けるには、羽の形・胴体の形・触角の形などに注目するのがポイントです。
【シロアリとクロアリの特徴】
種類 | シロアリ | クロアリ |
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羽 | 前後の羽が同じ大きさ | 前羽が大きく後羽が小さい |
羽脈 | 羽脈が細かくて薄い | 羽脈が少なく濃い |
胴体 | くびれがなく寸胴型 | 細いくびれがある |
触角 | 短い・数珠状で直線的 | 長い・「く」の字に曲がっている |
色・大きさ | 茶・黒・黄褐色など 5mm~10mm程度 |
茶・黒・茶褐色など 2mm~20mm程度 |
シロアリは羽の形・大きさがほぼ同じ
シロアリは羽の大きさが4枚ともほぼ同じですが、クロアリは前羽(頭側の2枚)が大きく、後羽(お尻側の羽)は小さいのが特徴です。
羽脈にも異なる点が見られます。シロアリの羽は網目模様が細かくて薄いのに対し、クロアリの網目はくっきりしていて、羽脈は多くありません。
また、シロアリの羽はクロアリよりもろくて抜けやすいため、家の周りに羽が散乱しているケースがよく見られます。
シロアリは胴体のくびれがなく寸胴型
シロアリは寸胴型をしており、胸とお腹の間にくびれがありません。一方のクロアリは、胴体が頭部・胸部・腹部に分かれていて、くびれが存在します。
羽を閉じた状態で胴体を観察するのは難しいかもしれませんが、羽が抜け落ちた後の状態であれば、比較的、見分けがつきやすいでしょう。
シロアリの触角はまっすぐで数珠状
触角も、シロアリとクロアリでは明確な違いが見られます。
シロアリの触角は、比較的短くまっすぐで数珠状ですが、クロアリの触覚は、長く「く」の字状に曲がっているのが特徴です。
ネックレスのように、小さな粒が連なった直線型の触角であれば、シロアリの可能性が高いでしょう。
色や大きさでは見分けが難しい
シロアリやクロアリの色や大きさは様々で、実に多くの種類が存在します。
シロアリはその種類によって、茶や黒、黄褐色など色が異なる上、サイズも5mmから10mmと多岐にわたります。
クロアリも種類によって色が異なり、サイズも2mmから20mmと幅があるため、色や大きさで両者を見極めるのは困難です。
また、シロアリには、日本全域に発生するヤマトシロアリや、西日本を中心に生息するイエシロアリ、関東を中心に生息地を拡大しているアメリカカンザイシロアリなどがいます。
発生時期や集団規模の大きさは異なりますが、どのシロアリも木材を食害し建物に被害を与える点は同じです。
【シロアリの種類とその詳細】
種類 | ヤマトシロアリ | イエシロアリ | アメリカカンザイシロアリ |
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分布 | 日本全国(北海道の一部除く) | 千葉から西の海岸線沿い・西日本・小笠原諸島など | 関東・関西・広島・鹿児島など |
発生場所 | 床下や水回りなど湿気のある場所 | 床下や水回りなど湿気のある場所 | 乾燥した場所でも生存可能 |
発生時期 | 4月~5月頃(日中) | 6月~7月頃(夕方~夜) | 3月~11月頃(日中) |
特徴 | 加害スピードは比較的遅い | 集団規模が大きいため加害スピードが比較的早い | 大型の外来種で被害スピードは比較的遅い |
羽アリがクロアリの場合は放置しても大丈夫?
クロアリは、シロアリのように木材を栄養源としないため、住居を食い荒らす心配はありません。
しかし、食べ物に敏感なクロアリは、キッチンに置いてある食材に群がったり、電化製品の中に巣を作り故障させたりする場合があります。
また、雑食性のためシロアリを捕食します。家の中でクロアリを見かけたら、シロアリが潜んでいる可能性も考えられるでしょう。
羽アリ(シロアリ)の発生による被害
羽アリの中でも木材を栄養源にするシロアリは、住宅にどのような被害を及ぼすのでしょうか。
ここではシロアリが及ぼす被害について解説します。
住居のゆがみや傾きが生じる
シロアリが建物の木材を食い荒らすと、ドアやふすま、窓などの開閉がスムーズにいかなくなったり、床を歩くとフワフワと浮く感じや、へこんでギシギシ音がしたりします。
また、柱や壁の表面をノックするように叩くと「乾いた空洞音がする」場合も、木材の内部が食い荒らされている可能性があります。
シロアリは太陽光や風を嫌うため、食害の被害にあうのは基本的に木材の内部です。表面上は異常がなくても、内部は食害が進んでいる場合も少なくありません。
なお、シロアリが木材の内部を食べる際、木材の表面に木くずやフンなどが付着していることがよくあります。
柱の表面やその付近に、不自然な木くずやフンを発見した場合は、シロアリの存在を疑った方がよいでしょう。
建物の耐震性が下がる
建物を支える、柱や土台などの基礎部分がシロアリの被害にあうと、建物の耐震性が下がり、地震が起きた場合に被害を拡大させてしまう恐れがあります。
一般的に、木造住宅は被害が拡大しやすいですが、鉄骨造の住宅でも柱や梁などの骨組み部分は木材が使われているため、シロアリの被害にあう可能性があります。
羽アリ・シロアリが発生する原因
ここでは、羽アリの大元となるシロアリがどのような環境を好むのか、発生する原因について説明します。
住居が高温で湿度がこもりやすくなっている
シロアリは、高温で湿気がこもりやすい「湿度が40%以上ある場所」を好みます。気温の低い冬であっても、暖房効率が高い住宅はシロアリが活動するのに好条件な環境です。
特に、換気システムが導入されていない木造住宅などは、湿度がこもりやすいので注意が必要です。
シロアリは、主に柱の中や床下、湿気がこもりやすい洗面所や浴室などを好みますが、屋根裏や畳周りのほか、押し入れや電気の配線など、いたるところに発生します。
また、湿地や田んぼを開拓してできた住宅地は、地盤に水けを含んでいることが多いため、シロアリが生活しやすい環境といえるでしょう。
近隣に公園や森林があり木が多い
シロアリは、木に含まれる繊維の一種「セルロース」を食料としているため、木が多く生えている場所に生息しています。
付近に公園や森林がある場合は、飛来して住宅に巣をつくる確率も高いと言えるでしょう。
また、近隣に空き家や廃材置き場がある場合も注意が必要です。古い木材や廃材は羽アリにとっては格好のすみかとなるため、そこを拠点とし、住宅に侵入される可能性もあります。
木材のほかにも枯葉や段ボール、紙類などもエサにしているので、家の周辺を小まめに掃除しておきましょう。
防蟻処理がされていない
家を建てる際、防蟻処理をしていない、または5年以上経過している場合は、羽アリの被害にあう可能性が高くなります。
防蟻処理は、床下などに薬剤を塗布してシロアリの発生を防ぐのが目的ですが、その効果は5年ほどです。
国土交通省の補助事業「シロアリ被害実態調査」でも、地域に関わらず防蟻処理をした住宅の保証期間内の羽アリ発生率は0〜18%となっていますが、防蟻処理をしていない住宅は、発生率が50%以上という結果が出ています。
羽アリの食害を防ぐためには、定期的な点検や適切な時期に再処理をすることが大切です。
電灯の光が外にもれている
イエシロアリの羽アリは、6月~7月の夕方から夜にかけて飛来します。
その際、電灯の光や家からもれる光に集まってくることもあるため、窓をきちんと閉めて、室内に侵入されないようにしましょう。
羽アリが発生したときの対処法
部屋の中に羽アリが発生した際、一番効果的なのは、掃除機で吸い取る方法です。
羽アリの骨格は繊細で弱いため、この方法であれば掃除機の吸い上げる圧力でほとんどの羽アリは死滅してしまいます。
もし掃除機の中で生きていても、生息するために必要な水分がなければ24時間以内に脱水症状で息絶えます。
ポリ袋を使う方法も効果的です。ドア枠や框等、発生場所を覆うようにポリ袋(ビニール袋)をかぶせて、中に羽アリが溜まるようにします。
ある程度たまったら口を結んで捨てて、また新しいポリ袋をかぶせます。
巣を駆除するには専門業者に依頼しよう
家の中に発生した羽アリは、掃除機で吸い取ることができますが、目に見える羽アリは、全体のわずか1%から3%と言われています。
たとえば、木材の中や床下に巣を作り、大量に生息している可能性があります。
そのため、自分でできる駆除はあくまでも応急処置と考えましょう。
完全に駆除するには、高度な技術とノウハウを持った専門業者に依頼することをおすすめします。
業者の選び方や駆除にかかる費用の相場はこちらの記事でも詳しく解説しています。
羽アリについてよくある疑問
市販の殺虫剤の効果や、羽アリの飛来に注意すべき時期やタイミング、また新築の羽アリ対策など、羽アリにまつわるよくある質問に答えます。
羽アリに殺虫剤は使える?
殺虫剤を使用して、目の前に現れた羽アリを退治することはできますが、おすすめはしません。
殺虫剤には羽アリ(シロアリ)が嫌がる成分が入っていることが多いため、使用することで、奥に潜むシロアリ本体が安全な場所に逃げ回り、別の場所で被害を拡大させる恐れがあります。
また、換気のできない場所で殺虫剤を大量に使用すると、薬が舞いあがり、それを吸い込んでしまうおそれもあります。
そのような健康面を考慮しても、羽アリを退治するのに、市販の殺虫剤を使用することはおすすめできません。
羽アリの発生時期はいつ?
シロアリの羽アリは4月から7月頃、クロアリの羽アリは6月から11月にかけて多く発生します。
また、同じシロアリでも「ヤマトシロアリ」は4月下旬から5月の午前から昼、「イエシロアリ」は5月下旬から7月の夕方から夜にかけて飛来します。
羽アリの姿かたちと合わせて、発生時期や発生する時間帯から、判断することも可能です。
【羽アリの発生時期と時間帯】
名前 | 発生時期 | 発生する時間帯 |
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新築でも羽アリ対策は必要?
古い家は羽アリの被害にあいやすいという印象があるかもしれませんが、新築でも羽アリが発生しないわけではありません。
新築の場合、建設時に薬剤による土壌処理や木材処理などをおこないますが、、年数の経過とともに、薬剤の利き目は低下していきます。
蟻防から5年ほど経過している場合は、薬剤の効果も薄れている可能性があるので、一度点検してもらうのもよいでしょう。
まとめ
羽アリは、羽の大きさや体系、発生時期などからその種類を見分けることが可能です。
また、シロアリは木材を捕食し、建物に被害を与えますが、クロアリは木材を捕食しません。
家の中に羽アリが発生した場合は、殺虫剤を使わずに掃除機で吸い取り、その後の対応は専門業者に調査を依頼することをおすすめします。
この記事の監修者
犬飼 章博
- 2015年 最年少で豊橋支店長就任
- 2021年 本社支店長就任
- 2023年4月より愛知県しろあり対策協会理事
住宅のシロアリ調査から始まり、その他の様々な害虫対策や防水・断熱といったリフォーム工事全般を経験してまいりました。調査実績は延べ数千件以上。
本社の支店長になっても現場が好きで、今も前線で活動しております。
疲れた体を癒すため、趣味は温泉巡りです。
- 資格
- しろあり防除士
- 一級建物アドバイザー