ベタ基礎とは、床下一面を鉄筋コンクリートで覆う工法で、近年の戸建て住宅は、ベタ基礎が採用されているケースがほとんどです。

ベタ基礎が、シロアリ対策に効果があると聞いたことがある人もいるのではないでしょうか。しかし、ベタ基礎の住宅でも、シロアリ被害を完全に予防できるわけではありません。そこで本記事では、シロアリに強いと言われているベタ基礎の特徴や実践できるシロアリ対策などについて解説します。

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ベタ基礎の特徴

近年では、ベタ基礎を標準仕様にするハウスメーカーも多いようです。下表の通り、ベタ基礎にはメリットやデメリットがあります。

メリット デメリット
・耐震性が高い
・湿気を予防できる
・寒冷地には不向き
・コストが高い

ベタ基礎は床下のコンクリートに鉄筋が入っており、建物を面で支える構造です。

建物の荷重が分散されやすいため、耐震性に優れています。

建物と地面に隙間があると、湿気が溜まりやすくなりますが、ベタ基礎は床下全てをコンクリートで覆う構造です。そのため、住宅と地面に隙間ができず、湿気を予防できます。

一方で寒冷地では、気温が低下すると地中凍結と呼ばれる現象が起きます。

地中凍結とは、気温の低下によって土が含んでいる水分が凍り、霜柱のように膨張することです。地中凍結が起きると基礎が押し上げられ、建物にダメージを与えます。

寒冷地では地中凍結による建物へのダメージを防ぐために、より深い位置に基礎を設置する必要があります。その分コストも高くなりやすいため、寒冷地では布基礎が選択されるケースも多いです。

また、ベタ基礎は布基礎よりも多くの鉄筋とコンクリートを使用するため、材料費が高くなりやすい傾向にあります。布基礎に比べて残土が出やすく、処分費や輸送費などにもコストがかかります。

ベタ基礎がシロアリに強いと言われている理由

ベタ基礎は、布基礎に比べてシロアリ対策に効果があると言われています。

ベタ基礎の構造から、シロアリに強いと言われる理由について解説します。

シロアリの侵入経路を防ぎやすい

シロアリは、土の中から建物の中に侵入します。侵入を防ぐためには、侵入経路を遮断することが重要です。布基礎でも防湿コンクリートと防湿シートを使用すれば、ある程度はシロアリの侵入を防げます。

しかし、布基礎はベタ基礎に比べてコンクリートが薄く、湿気が溜まりやすいため、シロアリ耐性は低い傾向にあります。

ベタ基礎は、床一面をコンクリートで覆う構造です。コンクリートに厚みがあることに加えて建物と地面が直接触れないため、シロアリの侵入を防げます。

湿気が溜まりにくい構造になっている

シロアリは、薄暗く湿気の高い場所を好みます。特に湿った木材は好物とするため、建物への被害を食い止めるには湿気を防ぐことが重要です。

布基礎は地面がむき出しになっているため、湿気が溜まりやすい構造です。湿気によって木材が水分を多く含むと、シロアリ被害に遭う可能性が高くなります。

一方でベタ基礎は、建物と地面の隙間を厚いコンクリートで埋めているため、湿気が溜まりにくい構造です。湿気が高い場所を好むシロアリを寄せ付けにくいため、ベタ基礎はシロアリに強いと言われています。

ベタ基礎でもシロアリが侵入する可能性はある

ベタ基礎は建物と地面が直接触れず、湿気が溜まりにくい構造なので、シロアリを寄せ付けにくいと言われています。しかし、ベタ基礎でもシロアリが侵入しないわけではありません。

ベタ基礎でもシロアリが侵入する可能性がある理由について、解説します。

布基礎よりもシロアリ耐性は強い

ベタ基礎は建物と地面が直接触れないため、シロアリの侵入経路を防ぐことが可能です。また、床下の隙間をコンクリートで覆うため、湿気が建物に伝わりにくい構造です。

しかし、シロアリに強いと言われているベタ基礎でもコンクリートの継ぎ目にはわずかな隙間が生じます。シロアリは0.6ミリ程度の隙間でも通れるため、ベタ基礎でも完全に侵入を防げることはありません。

蟻道を作って侵入するケースもある

シロアリは、直射日光と乾燥が苦手です。直射日光に数分さらされただけでも、体内の水分が失われ、死んでしまうと言われています。そのため身を守る手段として、直射日光を避けるために「蟻道」を作って移動する習性があります。

蟻道とは、土や木くずに排泄物などを混ぜ合わせて作ったトンネルのことです。蟻道があれば直射日光と乾燥を避けつつ、行動範囲を広げられます。

床下全面がコンクリートで覆われたベタ基礎でも、蟻道を作ってシロアリが侵入する可能性があります。

ベタ基礎の住宅にできる可能性のあるシロアリの侵入口

ベタ基礎でも、シロアリの侵入を完全には防げません。

コンクリートにわずかな隙間やひび割れがあると、そこから侵入する可能性があります。

ベタ基礎の住宅で、シロアリの侵入口となりやすい箇所を紹介します。

ベタ基礎の継ぎ目にできやすい隙間

ベタ基礎は床一面をコンクリートで覆う構造ですが、コンクリートの継ぎ目には、隙間が生じやすいのが現状です。床板部分と立ち上がり部分は別々にコンクリートを打ちつけるため、両者の間に継ぎ目が発生します。

遠くから見てわからなくても、近くからは継ぎ目に隙間が確認できることもあります。特に底面と立ち上がり部分は土に近い場所でもあるため、継ぎ目の隙間からシロアリが侵入してくる可能性があります。

経年劣化によるひび割れ

ベタ基礎は鉄筋コンクリートを使用するため、耐震性や耐衝撃性に優れています。

しかし、コンクリートは気温や乾燥などの影響によって、体積変化するのが特徴です。例えば気温が上がれば膨張し、下がると収縮します。

コンクリートが膨張や収縮を繰り返すと、経年劣化によるひび割れが発生することがあります。ひび割れからシロアリが侵入する可能性があるため、ベタ基礎でも築年数が古い建物の場合は注意が必要です。

金具や配管の隙間

ベタ基礎は、「セパレーター」と呼ばれる金具を使用してコンクリートを打ちつけます。

セパレーターとは、コンクリートの型を固定する留め具のような役割がある支持金具です。設置方法や金具の種類によっては、コンクリートとセパレーターの間に隙間ができ、シロアリが侵入しやすい状況になります。

また、基礎を貫通して配管を土中に伸ばす際には、湿気や外気による膨張で配管を傷つけないように、あえて隙間を作るのが一般的です。そのため、シロアリ対策が必要だとしても、隙間を作らないことはできません。

水抜きの穴

ベタ基礎を施工する際には、コンクリートを固めるために水を使用し、それを抜く作業があります。水を抜くときに穴があると、効率よく排出できます。そのため、施工するときには水抜き用の穴を設けるのが一般的です。

しかし、水抜き穴は床下内部と直接つながっているため、穴を伝ってシロアリが侵入してくる可能性があります。

ベタ基礎の住宅でできるシロアリ対策

ベタ基礎でも、シロアリの侵入を完全に防げるわけではありません。しかし、工夫次第でシロアリ対策を施すことが可能です。

市販の補修材で補強する

コンクリートにできたひび割れがわずかな程度であれば、市販の補修剤で補強できます。補修剤は、ホームセンターやオンラインショッピングなどで購入可能です。

DIYによるシロアリ対策は難易度が高い

わずかなひび割れであれば補修剤を購入し、自分で補強できます。ただし、ひび割れの範囲が広い場合は自分で補強するのが難しいため、専門業者に依頼する必要が出てきます。

短いタイプのセパレーターを使用する

ベタ基礎を施工する際にはセパレーターを打ち継ぎ部分にセットし、コンクリートを打ち込みます。打ち継ぎ部分にセットされたセパレーターは、設置後に外せないため、コンクリートとの間に隙間ができやすい側面があります。隙間を作らないためには、短いタイプのセパレーターを使用するのも手段の1つです。

コンクリートの型を固定するセパレーターには、長いタイプと短いタイプの2種類があります。短いタイプは、「半セパレーター」とも呼ばれています。半セパレーターを使用すると、金具とコンクリートの間の隙間を埋めることが可能です。屋外側と屋内側を貫通する穴ができないため、シロアリに侵入される可能性を軽減できます。

いずれも個人で対処できるものではないため、事前に施工会社に対して相談しておかなければならない点にr注意が必要です。

水抜き穴を塞ぐ

施工後に水抜き穴を塞げば、シロアリの侵入を防ぐことが可能です。

穴を塞ぐためには防虫ネットを張る、補修剤で埋めるといった方法があります。しかし、水抜き穴には、床下に溜まった水を排出する役割もあります。

漏水や大雨などによって床下浸水が発生した際には、水抜き穴があると排出できるため、完全に塞がないほうがよいでしょう。ただし、水抜き穴を塞ぐかどうかはハウスメーカーによって見解が異なるため、専門業者に相談する必要があります。

専門業者による定期点検を受ける

シロアリは人から見えにくい場所で活動しているため、気づかないうちに建物内に侵入している可能性もあります。何らかの異常に気づいた時には被害が拡大しているケースもあるため、定期的に専門業者の点検を受けるようにしましょう。

定期点検を受ける目安は、半年から1年程度を目安にしてください。

また、防蟻処理を施すと、シロアリの侵入を予防できます。

防蟻処理の方法には薬剤を散布する、防蟻シートを敷く、除湿剤を設置するなどがあります。

適切な方法は建物の状況によって異なるため、防蟻処理を希望する場合は専門業者に相談しましょう。

布基礎ではベタ基礎と同様の対策は難しい

シロアリ対策の方法は、ベタ基礎と布基礎で異なります。布基礎の場合は専門業者に防蟻処理を依頼するか、ベタ基礎へのリフォームを検討しましょう。

専門業者への依頼がおすすめ

布基礎は、逆T字型にコンクリートを打ち込む工法です。ベタ基礎に比べて地面に面している基礎の厚さが薄いため、湿気が溜まりやすい構造です。防湿コンクリートや防湿シートを使用すれば、布基礎でもある程度はシロアリの侵入を防げます。

しかし、床下全面がコンクリートに覆われたベタ基礎に比べると、シロアリ耐性は低いのが現状です。ベタ基礎と同じ方法では対策が不十分な可能性もあるため、専門業者に依頼して定期的に防蟻処理を施すようにしましょう。

依頼する専門業者の選び方やシロアリ対策の相場は以下の記事で解説しています。

増改築や全面リフォームでベタ基礎に切り替える手段も

布基礎の住宅のシロアリ耐性を高めるためには、増改築や全面リフォームでベタ基礎に切り替えるのも手段の1つです。布基礎からベタ基礎に切り替える際には、全面的に解体するのが一般的です。

しかし、建物を解体せずに、床下点検口を使用してベタ基礎に切り替える方法もあります。基本的には床下部分のみの工事になるため、住みながら基礎を切り替えることが可能です。

まとめ

近年は、戸建住宅にベタ基礎が採用されるケースがほとんどです。ベタ基礎は床一面をコンクリートで覆うため、湿気が溜まりにくい構造です。そのため、布基礎に比べてシロアリ耐性が強いと言われています。

ただし、ベタ基礎でもシロアリの侵入を完全に防げるわけではありません。シロアリの侵入に不安がある場合は、専門業者に依頼して定期点検を受けるようにしましょう。

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