家の周辺でシロアリを見かけたり、実際に住宅が被害にあっているのを見つけたりした場合、市販のシロアリ駆除剤で対処できないか検討する人も多いのではないでしょうか。市販のシロアリ駆除剤にはシロアリに有効な成分が含まれていますが、選び方や使用方法を間違うと正しく効果が出ないことがほとんどです。
そこで、市販のシロアリ駆除剤を購入・使用する場合の注意点や、市販品を使用する場合と業者が施工する場合の違いなどについてわかりやすく解説します。
市販のシロアリ駆除剤を個人で使用する際の注意点
ホームセンターで市販されているシロアリ駆除剤を使用する場合、薬剤を選ぶ段階から注意すべきことがいくつかあります。主な注意点は次の通りです。
駆除剤によって効果のあるシロアリが異なる
市販の薬剤や毒餌を使用する場合、商品によって効果のあるシロアリの種類が異なるため確認が必要です。たとえば日本の代表的なシロアリには「ヤマトシロアリ」と「イエシロアリ」の2種類が存在します。日本の家屋において、シロアリ被害の9割以上はこの2種類によるものです。市販の駆除剤もこの2種類に対応したものが多く出回っています。
一方、熱帯に生息するダイコクシロアリ、外来種のアメリカカンザイシロアリについては対象外になっている駆除剤もあります。
たとえばアメリカカンザリシロアリは一般的な2種類のシロアリと異なり、地中ではなく空中から飛来し、屋根や2階部分などの建材まで食害する性質を持っています。ヤマトシロアリやイエシロアリに比べると被害にあう確率はごくわずかですが、もし屋根や2階部分が被害にあっているようなら、アメリカカンザリシロアリにより食害されている可能性も検討しなければなりません。
もしアメリカカンザリシロアリにより被害を受けているのに、ホームセンターでヤマトシロアリやイエシロアリにしか効果のない駆除剤を購入しても、シロアリ駆除は不可能です。
自宅に巣くうシロアリの種類によって、購入する薬剤を検討しましょう。
薬剤の性能や特性が十分に発揮されるような選び方が重要になる
市販の薬剤は非常に種類が多いため、目的や用途に応じて最適な薬剤を選択しましょう。たとえば市販の薬剤は、床下に散布するものや置くだけでよい毒餌を中心に販売されています。また、有効期間も数ヶ月程度から数年持続するものまで幅広いです。
薬剤の種類によって効果的な使用方法や向いている用途が異なるため、価格の安さや内容量などで選ぶことは避けるべきです。
たとえば液体タイプ、もしくは粉末を水で希釈するタイプの薬剤は、木材や地面に噴霧して使用します。即効性がありますが、散布漏れが起きるリスクが高いです。一方、毒餌(ベイト)を置く方法は即効性に欠けますが、家の中に薬剤が回ることを避けられ、素人でも比較的安全に設置ができます。
このように薬剤は種類によって効果や特性が異なるため、状況に応じた選択が必要です。
防除薬剤は使用目的や対象生物ごとに分類されている
シロアリ対策に使用する防除薬剤は、予防剤や駆除剤、その両方を兼ねた予防駆除剤、あるいは土壌処理によってシロアリを防除する土壌処理剤など使用目的によって様々なものがあります。個人で薬剤を導入する場合は、シロアリが食害しないように予防をしたいのか、すでに発生しているシロアリの駆除をしたいのかなど目的に応じて選択が必要です。
一方、業者に依頼する場合は、特定の薬剤にこだわらないことも多いです。たとえば業務用の薬剤は市販品以上に幅広い選択肢があるため、業者によって使用する薬剤はまったく異なります。また、依頼者の住宅環境や家族構成、あるいはシロアリの種類などに応じて、複数の薬剤を組み合わせたり独自の配合で掛け合わせたりして使用することもあります。
これにより市販品以上に高い効果を生み出し、個々に合わせた最適な予防や駆除を可能にしています。
対象生物による薬剤の分類
薬剤には防虫剤や防蟻剤など様々な種類があり、いずれも対象生物が異なります。対象生物によってどのような違いがあるのか、一例をご紹介します。
防虫剤
防虫剤は主に、ヒラタキクイムシ科、ナガシンクイムシ科、シバンムシ科といった乾材害虫からの被害を防ぐために使用されます。たとえばヒラタキクイムシ科に属するキクイムシは文字通り「木食い虫」であり、卵から孵化した幼虫が住宅建材を食害することで知られています。
ナガシンクイムシ科の昆虫も、住宅に使用される木材や竹をはじめ、野菜や果物、穀物など様々な植物の中に入り込み食害します。シバンムシもまた、乾燥した木材や畳などを食べる昆虫です。防虫剤はこれらの虫を排除し、住宅が食害されるのを防ぎます。
なお、「防虫剤」という名称は大きなくくりであり、防虫剤の中に防蟻剤も含まれます。
防蟻剤
防蟻剤は文字通り「蟻」つまりシロアリの防除に特化した薬剤です。木材に直接散布したり、木材の内部に加圧注入したりなど様々な使用方法があります。防蟻剤によってシロアリの食害から住宅を守ることが可能です。
防腐剤
防腐剤は主に木材が腐ることを防ぐための薬剤です。木に木材腐朽菌が付着し繁殖すると、菌床となっている木材の成分がどんどん菌により分解されていってしまい、劣化に繋がります。そこで、防腐剤を木材に加圧注入し内部まで浸透させ、菌が繁殖しないようにする仕組みです。
防腐防蟻剤
防腐防蟻剤は、防腐剤と防蟻剤両方の効果を持った薬剤です。木材腐朽菌の生育を阻害して木材が腐ることを防ぎます。また、シロアリに高い毒性を持つためシロアリの食害についても同時に対策できるのがメリットです。一般的には木材に吹きつける・浸す、あるいは加圧注入するといった方法で使用します。
木材の腐朽とシロアリの防除両方の効果を持つことから、木材保存剤とも呼ばれます。
防黴材
防黴材は文字通り、木に対してカビ類の発生を阻止するための薬剤です。カビの発生原因になるカビ菌は空気中に存在しますが、防黴剤を使用することでカビの繁殖を抑えられます。カビの付着自体を防ぐことはできないものの、生育を阻害できるため結果的にカビ被害を防げる仕組みです。
シロアリ駆除剤の効果に関する注意点
市販のシロアリ駆除剤を使用する場合、効果についても覚えておきたい点があるため解説します。
市販品では完全に駆除しきれない場合がある
市販のシロアリ駆除剤を使用した場合、シロアリを完全に駆除しきれるとは限りません。たとえば市販品には床下に入ったり、屋外の通風口から吹きかけたりして薬剤を散布するタイプのものもありますが、これらの製品は薬剤がかかっていないところに対しては効果を発揮しません。人が入れない奥や配管が多い水回りの床下、木材の裏面や接続部分などは薬剤が届きにくいため、シロアリを駆除できない可能性が高いでしょう。
また、薬剤の散布を行うことで、逃げ出したシロアリが薬剤のかかっていないところに移動してしまい、被害を拡大させるおそれもあります。
毒餌についても同様に、設置してもシロアリが食べなければ効果がありません。また、毒餌を食べて巣に持ち帰り、死んだシロアリの死骸を仲間が食べて始めて駆除効果が発揮されるため、即効性に欠け食害が進んでしまうリスクがあります。
もし被害状況が一見してわからなかったり、明らかに大量のシロアリが発生している場合は市販品に頼らず業者へ依頼するべきです。
市販品は有効期間が短く頻繁に使用する必要がある
市販の薬剤は業務用と比べると効果が弱く、持続性も劣ります。たとえば、専門業者に依頼した場合一般的には5年効果が持続し、多くの業者が保証もつけています。一方、市販の薬剤の場合は数ヶ月しか持続しない製品も多いです。効果が切れるたびにシロアリ駆除や予防をしなければならないため、1回ごとの費用は安くても手間がかかり長続きしないことがあります。
シロアリ駆除は専門業者へ依頼するのがおすすめ
市販のシロアリ駆除剤はシロアリに有効な成分が含まれていますが、確実な効果が出るとは限りません。そのため、すでにシロアリ被害が出ている場合は市販品を購入するよりも専門業者へ依頼しましょう。
専門家の知見に基づいた適切な駆除が望ましい
シロアリにはヤマトシロアリやイエシロアリ、アメリカカンザリシロアリなど様々な種類があり、それぞれのシロアリに応じて効果的な薬剤や駆除方法が異なります。また、使用方法によっては屋内に薬剤が回ってしまい薬剤を誤って吸入したり、床下に閉じ込められたりといったリスクもあるため、専門家に予防や駆除を任せるのが無難です。
専門業者であれば、住宅の被害状況を確認し、どのシロアリが巣くっているのか、あるいはどの程度まで被害が及んでいるのか確実な診断ができます。業務用の効果的な薬剤を使い分けてくれるため、100%の駆除効果が見込めるのが最大のメリットです。
業者によっては、見積もりや被害状況の診断を無料でできるケースも多くあるため、気軽に問い合わせから始めてみましょう。
5年間の保証期間を設けている業者が多い
シロアリ駆除を業者におすすめするもう1つの理由として、長期的な保証を受けられることが挙げられます。一般的に、シロアリ駆除の専門業者は施工後5年間の保証期間を設けていることが多いです。これは、薬剤の有効期間が5年あることに基づきます。
市販の薬剤は有効期限がバラバラで短いため、次の使用を忘れてしまうリスクがありますが、業者に依頼すれば5年後、ちょうどよい時期に定期点検のお知らせが届くことが多いでしょう。1回の施工で効果が長期間保証され、次回の予防時期もわかりやすいため、専門業者への依頼がおすすめです。
こちらの記事で、業者の選び方や駆除費用の相場についてより詳しく解説しています。
まとめ
市販のシロアリ駆除剤は効果のあるシロアリが異なります。また、シロアリを含む木材の被害を防ぐために有効な薬剤には防蟻剤や防黴剤、防腐剤など様々な種類があり、状況に応じて使い分けや併用が必要です。
それぞれの薬剤が正しく効果を発揮するための方法も状況に応じて変わってくるため、素人が完全な駆除を行うのは非常に難しいといわざるを得ません。もし、すでにシロアリ被害を受けている場合、市販の駆除剤を使用することでかえって被害を拡大させたり、駆除が遅れたりする可能性もあります。
どの薬剤がよいのかわからない場合や、すでにシロアリ被害を受けている場合は市販品をやみくもに購入するのではなく、専門業者を頼りましょう。専門業者へ依頼すれば5年の保証を受けられ、100%の駆除効果を見込めます。見積もりは無料でできることが多いので、まずは問い合わせてみてください。